
【本紹介】イヤミスの名手が描く背筋がぞわっとするミステリ【鳥肌必死】
こんにちは、辺野もへじです。
皆さん、たまには嫌~な後味の物語を読んでみませんか?
作家志望の私はイヤミスが大好きで、かなり読み漁っています。
今回ご紹介する作品はそんな私がおすすめする、嫌なミステリの名作です。
イヤミスは普段読まないというあなたも、その怖い面白さの虜になることでしょう。
儚い羊たちの祝宴


- 静かな文体で綴られる這い寄る狂気
- 気品と危うさを内包した近代日本の名家描写
- 最後の一行に込められたニュアンスの深さと恐ろしさ
結末はどんでん返しではなく、じんわりと意味を理解し、恐怖する種類のものとなっております。
作者の米澤穂信さんについてのご紹介です。
氷菓をはじめとした古典部シリーズで有名ですが、イヤミスにも定評があり、ダークな作品こそ真骨頂だと私は思っております。
特に下記の3作品、『満願』『本と鍵の季節』『Iの悲劇』は特におすすめです。

あらすじのご紹介です。
あらすじといっても、短編集なのであまり深くは語れないのですが、各話共通する概要をご説明いたします。
時代背景は近代日本が舞台となっております。
名家の子女が集まる読書会、通称【バベルの会】が各話共通して出てきます。
各話のタイトルは古風なネーミングとなっております。
- 身内に不幸がありまして
- 北の館の罪人
- 山荘秘聞
- 玉野五十鈴の誉れ
- 儚い羊たちの晩餐
それぞれのタイトルから伝わってくる不穏な空気の通り、静かな狂気が流れる5つの短編となっております。
各話に登場するのは、バベルの会の所属する由緒正しき家々と、そこに関わる登場人物達です。
- 丹山家のお嬢様を慕う使用人
- 六綱家当主の妾腹の娘と別館に幽閉される長男
- 辰野家の別荘を一人で管理する使用人と登山者
- 小栗家の娘とその使用人
- 大寺家の娘と料理人
それぞれの結末には怖気が走ります。
あらすじとしてはこれ以上は語れません。
個人的に良かった話は2つです。
『身内に不幸がありまして』
『儚い羊たちの晩餐』
思わず「うわあ」となるような結末で、直接的な描写はないものの、一部グロ注意なので苦手な方はお気を付けください。
絶対正義


- 正義が自分たちへとむけられる恐怖
- 過剰な正義の凶悪さ
- 正義を極めた人間の気持ち悪さ
真綿で首を絞められるようなイヤミスの傑作となっております。
絶対的な正義の恐ろしさを描いた作品です。
正義=善ではないということを思い知らされる一品で、作品に登場する人物の不気味さだけで読む価値があります。
この作品の作者秋吉理香子さんは有名なのでご存知の方も多いと思いますが、湊かなえさんと並ぶイヤミスの代表的作家です。
映画化された『暗黒女子』をはじめ、多くの質の高いイヤミスを送り出しており、私が作家買いをする作家のひとりです。

あらすじのご紹介です。
物語の主軸となるのは、高規範子という人物です。
この人物は礼儀正しく、模範的であり、名前の通り皆の規範となるような人物です。
今回の主人公である4名の女性たちはかつて範子の正義感に救われた経験がありました。

しかし、範子の正義感は度を越しており、頼もしい存在である一方で、実は諸刃の剣でもありました。
次第に範子の正義感は4人へと牙をむき始めます。
やがて精神的に追い詰められた四人は範子を殺害してしまいます。
範子の殺害から5年後、4人のもとに殺害したはずの範子から招待状が届きます。
正義のモンスター高規範子の度を越した正義が4人の人生を狂わしていく様を本作では描いています。
この作品のみどころは、行き過ぎた正義の恐ろしさです。
正義故に反論ができない歯がゆさと恐ろしさ、それがリアルに描かれています。
とりわけ高規範子の人物像にはそれだけで読む価値があります。
ただひたすら気持ち悪く、恐ろしく、いらだたしい。
そんな絶対に関わりたくない範子は必見です。
ポイズンドーター・ホーリーマザー


- 抑圧された感情が暴発する恐ろしさ
- 物事を一面しか見えていない恐ろしさ
- 誰しも陥ってしまいがちな浅慮の恐ろしさ
浅はかな誹謗中傷が蔓延する社会の闇を映し出しているようでもありました。
この作家についてのご紹介です。
湊かなえさんは告白で一躍有名となり、「嫌なミステリー」というジャンルを世に知らしめた作家です。

本作でもその真骨頂が炸裂します。
あらすじについてご紹介します。
本作はままならない愚か者たちを主題にした、6編の短編集となっております。
- マイディアレスト
- ベストフレンド
- 罪深き女
- 優しい人
- ポイズンドーター
- ホーリーマザー
いずれも読者を没入させ、最後に手のひらを返す内容となっております。
各話、冒頭から不穏な語り口で始まり、嫌な予感が漂ってきます。
ネタバレを避けるために、ここでは各話の主人公の紹介にとどめます。
- 妹が通り魔に殺害された姉
- 脚本家を志すも、同期に先を越される女
- 死傷者15名を出した容疑者の昔馴染み
- 昔から嫌な役目を引き受けて来た女
- 母親の支配に不満を持つ女
- 母親の支配に不満を持つ女の友人
各話の主人公の紹介だけで、イヤミス感がひしひしと感じられます。
そして各話の結末と真相に様々な感情が生まれること間違いなしです。
とりわけ巧み過ぎるストーリー展開と心情描写は素晴らしいの一言です。
個人的に好きな話として、2つ挙げさせていただきます。
『ベストフレンド』結末は悲しいが、救いのある話
『優しい人』優しい人が下した悲しい決断の話
どちらも人物描写、心理描写は見事でした。
まとめ
いかがだったでしょうか?
イヤミスは人を選ぶジャンルですが、その展開の鬱さや人の恐ろしさはファンタジー小説や普通のミステリ小説では拝めない要素です。
ぜひ一度試していただきたいと思います。
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